深刻な人手不足は今までのサービス水準の転換を必要とする。

優理愛です、13年にアマゾンジャパンの宅配を引き受けてから荷物の増加ペースが加速。
15年度の宅配便取扱数は5年前に比べて3割増えた。
労組は人員増強を求めてきたが、社員数は同1割強の増加にとどまった。
会社は最新鋭の物流倉庫の稼働や他社との共同配送、LINEを使った不在通知の導入など、人手不足を補う策 を取ってきたが焼け石に水だった。
要求を実効性のある内容に変えなければならない。
意を強くした森下は、組合員の訴えをまとめ、荷受けの総量抑制や時間帯指定サービスの見直しを初めて盛り込んだ要求を決めた。
これ以上働かせられない。
サービス維持に危機感を抱いていた社長の長尾も素早く動いた。
労組などからサービス残業問題の指摘を受け、年明けから労働実態の把握に着手。運転手ら約7万6000人を調査し、未払い残業代を支給する方針を示した。
2月1日には社長直轄の働き方改革室を新設。
通常は4月に行う組織改正まで待っていられなかった。
2月10日に労組から要求を受けると、21日には全社員に働き方改革の意志を伝える社長メッセージを発信。
役員を全国に派遣 した。
常務執行役員の森日出男は1泊2日で愛知県、大阪府、北海道にある各支社を訪ね、社員に生き生きと働いてもらうための改革だと説いて回った。
3月15~16日に開かれた団体交渉。
例年妥結するのは2日目の深夜だが、今年は午後7時半に決着した。
賃上げの攻防はあったものの、働き方改革に関しては、労組の要求を会社側がほぼ受け入れた。
大切なのは実際に労働現場が変わるかどうか。
森下の視線は既に先を向く。
きめ細かなサービスで消費者をつかみ、成長してきた日本企業。
深刻な人手不足は今までのサービス水準の転換を必要とする。